こんにちは!
くくたる(twitterはコチラ)です!
【薬剤師歴11年目】
●フリーランス薬剤師
●管理薬剤師歴:調剤3年、OTC1年目
●1人薬剤師歴(調剤):2年
【その他資格】
●国際中医師
●ハーバルセラピスト
●シニアハーバルセラピスト
※国際中医師は医師免許ではありません。
季節の変わり目になると口唇ヘルペスができやすくなりますよね…!
ドラッグストアで働いていると、お客様(患者様)から「ヘルペスの薬が欲しい!」と相談されることが増えてきます!
「アクチビア(アシクロビル)とアラセナ(ビダラビン)はどちらがいいの?」と質問されることが度々ありましたので、今回はアシクルビルとビダラビンの強さや薬理作用の特徴などについて紹介したいと思います!
単純ヘルペスウイルスについて
ヘルペスウイルスはDNAウイルスであり、DNAの長さは150kbp(15万塩基対)、全長は180nmです。ヘルペスウイルスは、コア、カプシド、テグメント、エンベロープ、スパイク等から構成されます。
帯状疱疹の基礎 – マルホ 医療関係者向けサイト
単純ヘルペスウイルスはDNAウイルスであるため、デオキシリボースで構成されております!
薬剤の構造式の特徴を考える上で大切なので定義を引用しました!
デオキシリボースとリボースの構造を確認
デオキシリボースとリボースの違いは2位の炭素のOH基の有無ですね!
薬理作用の特徴①DNAポリメラーゼを阻害する
DNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスのDNA鎖の伸長を停止させ、ウイルスDNAの複製を阻害するわけですね!
構造式で見るとわかりやすいので、それぞれ紹介します!
アシクロビルの構造式
アシクロビルの活性体であるアシクロビル三リン酸(ACV-TP)がデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)と競合してウイルスDNAに取り込まれることで、ウイルスDNAの伸長が停止されます!
※添付文書要約
ビダラビンの構造式
「ビダラビンは生体内において活性型のAra-A(Ara-ATP)となり、ウイルスのDNA依存性DNAポリメラーゼを強力に阻害するものと推察されている」
とインタビューフォームには記載があります!
構造式で見ると、ビダラビンはデオキシアデノシンに似た構造となっているため、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)と競合すると考えられますね!
薬理作用の特徴②薬剤の活性化の仕方に違いがある
アシクロビルの活性化
①アシクロビルは、単純ヘルペスウイルスが感染した細胞内に入ると、ウイルス性チミジンキナーゼにより一リン酸化される!
②その後、細胞性キナーゼによりリン酸化されアシクロビル三リン酸(ACV-TP)になる!
感染細胞でのみ活性化されるため、非感染細胞に対する障害性は低いと考えられております!
ビダラビンの活性化
「生体内において活性型のAra-A(Ara-ATP)となり~」とインタビューフォームには記載されており、アシクロビルのように感染細胞でのみの活性化ではありません!
「非感染細胞でも活性化を受けるなら正常な細胞にも障害を起こす可能性があるのではないか?」
という疑問が生じると思いますが、同インタビューフォームでは
「Ara-Aの種々のDNAポリメラーゼに対する阻害作用を検討したところ、単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のDNAポリメラーゼに対しウサギ腎細胞由来のDNAポリメラーゼαの116倍、βの39倍の阻害作用を発揮した。以上のことから、Ara-AはウイルスのDNAポリメラーゼを選択的に阻害し、抗ウイルス作用を発揮すると推察された。」
と記載があり、ヘルペスウイルスのDNAポリメラーゼに対してある程度の選択性があることがわかります!
アシクロビル耐性単純ヘルペスウイルスとは?
アシクロビルはウイルス性のチミジンキナーゼにより活性化されるため、ウイルス性のチミジンキナーゼ遺伝子に変異が起きるとアシクロビルに耐性ができると考えられております!
ビダラビンについてはウイルス性のチミジンキナーゼで活性化を受けるわけではないため、アシクロビル耐性単純ヘルペスウイルスにも効果が期待できます!
アラセナ(ビダラビン)軟膏のインタビューフォームでは「アシクロビル耐性単純ヘルペスウイルス(HSV-2)接種マウスにおける抗ウイルス作用」について記載があります!
マウスのウイルス接種28日後の死亡率は、
●無塗布:12/20(60%)
●クリーム基剤:12/20(60%)
●ビダラビン軟膏:5/20(25%)
●ビダラビンクリーム:4/20(20%)
と記載されており、ビダラビンを塗布した場合にはマウスの死亡率が低下していることがわかり、アシクロビル耐性単純ヘルペスウイルスにも効果があると考えられますね!
アシクロビルやビダラビンは予防的に使える?
「予防として使いたい!」と言われる方もいらっしゃるのですが、アシクロビルやビダラビンのようなDNAポリメラーゼ阻害薬は潜伏中のウイルスに対しての効き目は期待できません!
DNAポリメラーゼ阻害薬はウイルスを増殖させようとしている活発な状態を抑えるため、増殖活動を行っていない潜伏期では無効と考えられております!
アシクロビルとビダラビンはどちらが強い?使い分けは?
3%アシクロビルと3%ビダラビン軟膏の二重盲検比較試験の結果によると、どちらも同じ程度の効果と考えられております!(PMID:6375840)
①アシクロビルはウイルス感染細胞でのみ活性化されるため、ビダラビンと比べると副作用のリスクが少ない点がメリット!
②アシクロビルは耐性ウイルスの可能性がある点がデメリット!
なので、個人的にはまずはアシクロビル軟膏を使用してみて、効き目が悪ければビダラビン軟膏を使用すると良いと考えます!
参考文献
インターネット
Treatment of herpes simplex keratitis: comparison of acyclovir and vidarabine(PMID:6375840)
アラセナA軟膏3%インタビューフォーム※PDF直リンク
書籍
最後に
というわけで、今回はアシクロビル軟膏とビダラビン軟膏の比較をまとめました!
構造式と薬理作用がイメージしやすい薬は勉強していて楽しいですね!
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