こんにちは!
くくたる(twitterはコチラ)です!
【薬剤師歴11年目】
●フリーランス薬剤師
●管理薬剤師歴:調剤3年、OTC1年目
●1人薬剤師歴(調剤):2年
【その他資格】
●国際中医師
●ハーバルセラピスト
●シニアハーバルセラピスト
※国際中医師は医師免許ではありません。
ケトコナゾールの外用液は脂漏性皮膚炎に使われますよね!
私は正直なところ、今まで特に疑問に思わずに調剤をしてました!
「適応で脂漏性皮膚炎」と書いてあるからなーくらいの認識でした…。
適応に記載があるため間違いはないのですが、勉強中にたまたまケトコナゾールが抗アンドロゲン作用を持つとの情報を得たので、今回はそう考えられている文献の紹介と構造式の考察をしたいと思います!
抗アンドロゲン作用があるとするならば、男性ホルモンによる皮脂分泌亢進→ニキビや赤みの悪化に対しての効果も期待できる可能性があるため、ケトコナゾールが脂漏性皮膚炎に使用される理由がより納得できるものになります!
似たような事例としては、スピロノラクトンによる適応外のニキビ治療がありますね!
スピロノラクトンの構造式や女性化乳房についてまとめている記事はコチラがあるので、興味を持っていただけたら見てみて下さい!
日本皮膚科学会雑誌のポスター演題(2005年115巻3号449ページ)
私が参考にした文献の概要を引用します。
アンドロゲン受容体(AR)に結合することが報告されているケトコナゾールが抗アンドロゲン作用を持つかどうかを調べるために,我々はサル腎臓線維芽細胞様細胞であるCV-1細胞にAR発現ベクターとmouse mammary tumor virus(MMTV)プロモーターを含むレポーターベクターを一過性にトランスフェクトし,1nM合成アンドロゲンR1881で誘導されるARのトランス活性へのケトコナゾールの影響を調べた.その結果,10,20μg/mlケトコナゾールが各々約40,50%AR活性を抑制した.そこで31―56歳の男性型脱毛の男性5名に2%ケトコナゾールローションとシャンプーを半々に混合して週2―3回洗髪に用いてもらったところ3―6ヶ月後そのうち3名に若干の発毛効果がみられた.以上よりケトコナゾールはマイルドではあるが抗アンドロゲンおよび抗男性型脱毛作用を有すると考えられた.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/115/3/115_445/_pdf/-char/ja
※下記の参考文献にリンク記載しています。
概要のみですが、抗アンドロゲン作用についての検討がされておりますね!
ポスター演題そのものの内容確認ができておりませんが…
●対象の男性が5人なところ
●二重盲検比較試験ではなさそうなところ
●ケトコナゾールローション2%とシャンプーの混合量がわからないところ(元のポスター演題には書いてあると思いますが…)
あたりが個人的には気にはなります…!
アンドロゲン受容体(男性ホルモン受容体)の発現について
アンドロゲン受容体は毛包の毛乳頭細胞に発現している。
5α還元酵素(5αリダクターゼ)の1型、2型
①Ⅰ型はほとんどの毛の毛乳頭細胞に分布(全身的)
②Ⅱ型は髭や前頭~頭頂毛の毛乳頭細胞に分布
ケトコナゾール錠の添付文書
日本では外用剤のみで内服がないため、米国のDailyMedで検索したケトコナゾール錠の情報を紹介します!
興味ある方はこちらのリンクを参照して下さい。
ケトコナゾール錠の副作用
外用剤と比べて内服薬は様々な副作用が報告されております!
その中の1つに「女性化乳房」の報告があります!
※%の記載はなし。
女性化乳房については様々な理由があると思いますが、抗アンドロゲン作用や5α還元酵素阻害作用のように、何かしらの男性ホルモンの効力が少なくなった場合に発生することが知られています!
※女性化乳房について考察している記事はコチラ。
ケトコナゾールの構造式の考察
こちらがケトコナゾールの構造式です! こちらの右側をOを中心に回転させると…。
このような形になりますね! 何度も間違えていないか確認しましたが…大丈夫ですよね?
ちなみにピンク色の線を付け足したものが下の画像です!
または…
ステロイドの雰囲気がある構造だと思いませんか?
※ピンク線で五角形の形がバラバラなのはうっかりです…。
構造式はあくまでも考察ですが、結果として
「ケトコナゾールによる抗アンドロゲン作用があると考えられている」
「ケトコナゾール錠には女性化乳房の副作用がある」
ことは間違いない事実です!
非ステロイド性抗アンドロゲン薬の紹介
非ステロイド性抗アンドロゲン薬のビカルタミド、フルタミドの構造式にピンク色の線を引いたものを紹介します!
フルタミドの構造式
ビカルタミドの構造式
フルタミド、ビカルタミドは非ステロイド性ですが、ステロイドの雰囲気がある構造に見えませんか?
これらのピンクの線についてもケトコナゾール同様に予測になりますが、これらの薬剤が「抗アンドロゲン作用があること」は確定しております!
※構造式から女性化乳房についての考察している記事はコチラ。
その他アゾール系内服薬の構造式
結論を先に書くと、ケトコナゾール以外の内服薬では抗アンドロゲン作用はなさそうです。
イトラコナゾール
女性化乳房の記載なし
ラブコナゾール
女性化乳房の記載なし
フルコナゾール
女性化乳房の記載なし
ボリコナゾール
女性化乳房の記載なし
ミコナゾール
女性化乳房の記載なし
いかがでしょうか?
これらのアゾール系の薬剤は、私はステロイド骨格に近い形ではないと考えております!
※イトラコナゾール、ラブコナゾールが若干惜しい形をしているように思いますが…。
少なくともこれらの薬剤は「添付文書上は女性化乳房の記載はない」ですね!
参考文献・リンク
①日本皮膚科学会雑誌のポスター演題、2005年115巻3号449ページ(J-STAGE)
③Ketoconazole binds to the human androgen receptor(PubMed)
④AGA(男性型脱毛症)について(アデランス)
⑤各種添付文書
終わりに
というわけで、今回はケトコナゾールの抗アンドロゲン作用についての文献紹介と構造式の考察の紹介でした!
仮にケトコナゾールに抗アンドロゲン作用がなくても、マラセチア菌に対しての効果は期待できますし、脂漏性皮膚炎の適応もあるため問題ありません!
しかし、抗アンドロゲン作用があるとすれば他のアゾール系外用剤との使い分けの理由になりますよね!
私はすべての薬剤には当てはめられておりませんが、構造式から推測することが役立つ場面はあるため、今後も構造式から考えられることを紹介していきたいと思います!
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